本研究では、混雑課金についてETC : Electronic Toll Collectionを利用した自己選択型差別料金制度、すなわち、ピーク時の割増料金とオフピーク時の割引料金を組み合わせた可変差別料金体系と通常の定額料金体系といった複数の料金体系の中から利用者自身が契約によって料金体系を選択する制度の導入を検討する。そこでは、当該料金制度の導入により、全ての利用者が自己選択によって制度導入前と比較して不利益を被ることを回避しつつ、ピーク時の混雑緩和を実現できる可能性に着目する。さらに、ETCの普及過程を通じて変化する施策環境下で、最適な自己選択型差別料金制度の設計とその導入過程をシミュレートし、普及が進む我が国のETCが持つ潜在的有効性を明らかにすることを最終的な目的としている。 平成18年度は自己選択型差別料金制度の導入が高速道路混雑現象に与える影響について主として経済的な観点から問題の性質を検討した。 まず、ネットワーク産業における自己選択型差別料金制度に関する既存研究を整理し、その経済的特徴を検討した上で、日本の高速道路会社が導入したETCを自己選択型料金制度として位置づけ、道路混雑緩和を目標とした自己選択型料金制度を利用した時間可変課金の方法を検討した。 次に、料金設定を考慮した道路混雑シミュレーションに関する既存研究を調査し、研究の基本となるモデルをADLモデルをもとに構築した。 以上の成果を、台湾国立交通大学のセミナーで公表するとともに、交通シミュレーションの専門家からシミュレーションに適用する際のポイントと需要の弾力性の設定に関する助言を受けた。また、国内においては土木計画学研究発表会において公表を予定している。 一方、次年度に向けて本年度に構築した理論モデルを交通シミュレーションに適用すべくワークステーション及び交通シミュレーションのソフトを購入し、試験的な運用を試みた。
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