都市圏におけるピーク時の高速道路混雑緩和は、その社会的重要性は認識されているものの、改善されない課題の一つである。近年、ETCの導入によって料金徴収に関わる渋滞は緩和されたが、その効果は依然として料金所付近の局所的なものに過ぎず、高速道路網全体の混雑緩和には繋がっていない。また、ETCの普及促進や景気対策としての各種の高速道路割引制度が実施され、これらが原因であると思われる新たな混雑も生じている。 本研究では、現実に実施されているETC通勤割引制度を含む現行の高速道路料金体系を自己選択型差別料金制度、すなわち、ピーク時とオフピーク時で差別化された料金体系と通常の走行時刻によらない定額料金体系の中から利用者自身が料金体系を選択する制度として捉え、高速道路利用の効率性についてシミュレーションを含む分析を行った。その結果、既存の混雑料金理論では指摘されてこなかったピーク時間に料金割引を実施しているにも関わらず、混雑水準が上昇しない状況を自己選択型料金制度の導入が生じさせ得ることと、その条件を解析的に導出し、混雑が悪化する場合の政策対応をまとめた。 本年度は、これらの理論を精緻化し、国際学会、国内学会で発表すると伴に、ボトルネック混雑が生じる箇所の物理的な特徴を考慮できるようにモデルを拡張した。その結果、ETC通勤割引制度が料金所を含む箇所に応じて、ボトルネック混雑が緩和される条件を解析的に求め、混雑が悪化した場合の政策対応をまとめた。これらの研究成果は応用地域学会の研究発表会で報告した。
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