本研究では安心・安全を得るための災害・環境リスクアセスメントを支援するプラットフォームとして、GIS(地理情報システム)をコア技術としつつ、人々の安心・安全に関する空間認知尺度などと関連づけた「リスクを基準とする安全の評価」を可能とする時空間データベースの構築と、その活用方法の検討を行った。 本年度は、昨年度に中学校の協力を得ながら収集した子ども目線でのアクシデント・インシデント・ヒヤリハット事例をさらに分析することで、その不安要因・危険要因に関する背景事情・空間要素を抽出し、空間的リスク認知のデータ構造化やモデリングを行った。また、利用者限定型のWebGISを活用してこれらの情報を可視化するための空間情報プラットフォームを整備し、『まち歩き』で得られた中学生ならではの発想や気付きなど経験的な空間認識の特徴を、自治会町内会等の地域を見守る大人たちヘフィードバックすることで追体験させ、地域の問題点だけではなく、情報の相互利用・更新のあり方などについて検討を行った。 本研究は、日常のヒヤリハット事例や過去の災害・事故事例とその対応経験などに内在する暗黙知を、その構造化および空間的に可視化することで形式知に換え、地域のステークホルダーである子どもと大人が状況認識を統一することで知恵化を図った課程に意義があり、引き続きPDCAサイクルをまわしていくことが重要である。 尚、これらの研究過程で得られる知見は、本学で平成16年度から採択されている文部科学省科学技術振興調整費新興分野人材養成プログラム「高度リスクマネジメント技術者育成ユニット」および平成20年度から学内措置で行われている副専攻プログラム「安心安全マネジメント」の教育現場にも還元していく。
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