研究概要 |
ヒューマン・インタフェースにおける重大事故の要因であるヒューマンエラーを防止するために,人間の応答や生理反応の特性分析が必要である。さらに,近年の高齢化に対し若年者と高齢者の知覚情報に対する生体応答の違いも明らかにする必要があると考えた。 平成19年度の研究では、若年者高齢者の視覚情報処理機能を比較することにより,どの処理過程が加齢により最も影響を受けるのかを実験により検討し,高齢者の視認性低下の原因を明らかにすることを目的とした。研究では,高齢者と若年者の視覚情報処理の特性を調べるために,"視対象を検知"し,"注視点移動"を行い,"認識"するという,一連の処理過程を次の4つに分類した。 Step1.対象(刺激)を見つけることができるか否か,Step2.認識のための準備時間,Step3.眼球運動の正確さ,Step4.認識に要する時間 これら処理過程の中で,どの過程が最も加齢による影響を受けるのかを分析することとした。分類したStep1〜4は,視覚機能の部分と情報処理機能の部分に分けられる。研究では,Step2〜4視覚情報処理能力について分析し,高年齢者の感覚、知覚と瞬間判断能力について検討した。 その結果,得られた成果を要約すると,次のようにまとめられる。 1)視対象へ注視点を移動する際のサッカード潜時ついては,高齢者は若年者は比べて延長し,さらに,近距離への注視点移動においてもサッカード潜時に遅れが生じる。また,高齢者は修正サッカードの発生確率が若年者に比べて高いことから,加齢によりサツカード精度が低下することも示した。 2)高齢者は,若年者に比べ視対象の特性を認識するために要する時間が延長する。また,年齢に限らず視対象の種類によって認識時間が異なることも示した。 これらの内容は,新規性,有用性,発展性が認められ日本生理人類学会誌に掲載されている。
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