研究概要 |
本研究は, 近年, 増大傾向にある豪雨による浸水被害の軽減のために. その評価指標について検討し, 住民が各自の安全を守ることならびに行政による都市水害対策, 政策立案に寄与することを目的としている. 平成20年度は, 合流式下水道が整備された低平地密集住宅地(約1,000ha)における浸水被害の軽減を目的に, 短時間豪雨による内水氾濫の危険度評価と貯留施設による軽減効果について定量した. 外力として継続時間2時間の短時間集中豪雨を対象排水区に与えて解析を行った結果, 本排水区では時間降雨量40mm/hrを超える場合には浸水が生じることを明らかにした. また, 総降雨量が同じでも, 前ピーク型の降雨よりも後ピーク型の降雨の方が浸水範囲は広く, 降雨分布により, 浸水範囲が大きく異なることを示した. また, ハード対策として, 貯留施設(約40,000m^3)を建設することにより, 総降雨量60mmの場合は, 浸水量, 浸水面積とも大きな改善効果が見られ, 危険度の低減にもつながることを明らかにした. しかし, 総降雨量100mmの場合には, 検討した貯留施設だけでは大きな削減効果が得られないため, 他の併用施策も検討する必要がある. 本研究により, どの程度の降雨の時に内水氾濫が生じるのか, また, それはどこでどの程度の水深, 流速が生じるのか, それにより避難に支障をきたすのかということが明らかになった. 本知見を活かためにも今後, 降雨予測技術の確立とその精度向上ならびに一般の人への情報公開が重要である. 以上のように本研究は. 一人一人が身の安全を守る上でも, 行政が対策を講じていく上でも非常に重要な知見を示している.
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