研究概要 |
本研究課題では,地表断層地震と地中断層地震の震源近傍の地震動強さが周期1秒付近で逆転する地震動パラドックスについて,震源サイドの動力学的な原因を定量的に明らかにすることを目的としている.そして,地震動パラドックスが再現可能な震源のモデル化手法を構築し,断層パラメータの物理的な上限を明らかにすることによって,地震動の上限値について考察する. 平成19年度は,Mw6.7-7.0クラスの地中断層地震から生成される周期1秒付近の地震動レベルは,Mw7.2-7.6クラスの地表断層地震から生成されるそれよりも大きいという,Somerville(2003)によって提唱された地震動パラドックスの仮説を検証するため,Mw6.0〜7.5クラスの地震を想定し,震源近傍の地震動の逆転現象を動力学的震源モデルによって再現することにより,その成因を考察した(Dalguer, Miyake, et. al., 2008).断層の破壊開始点を地中断層地震ではアスペリティよりも深く,地表断層地震についてはほぼ同じ深さに配し,地中断層地震に比べて,地表断層地震の非アスペリティ領域の破壊エネルギーをより小さくした場合に,震源近傍の地震動の逆転現象が再現されることが確認された.また,このような震源近傍の地震動が含む長周期成分に着目し,震源近傍の長周期地震動と位置づけることとした(Koketsu and Miyake,2008). さらに,研究進行中に発生した,Mw6.7-7.0クラスの地中断層地震に相当すると考えられる2007年新潟県中越沖地震について,柏崎刈羽原子力発電所をはじめとする震源近傍で記録された,極めて大きな地震動の成因を考察するため,経験的グリーン関数法による広帯域強震動シミュレーションを行い,震源のモデル化に着手した.
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