研究概要 |
火山噴煙現象の理解、再現を目的に,火山噴煙の3次元数値プログラムの作成と可視化研究をすすめた。 数値プログラムに関しては地球シミュレータ規模の大型計算機に実装できる高精度かつ高速の流体数値モデルを作成した。モデルの正当性を検証するために実験的によく調べられている単純な乱流ジェットのシミュレーションを行い,実験と整合的な乱流混合効率を再現することができた。さらに噴煙現象に適用し,ピナツボ1991年噴火を想定した数値シミュレーションを行った。その結果,衛星写真から得られた(1)噴煙最高高度と(2)水平に広がる傘型噴煙の半径拡大率,火山堆積物分布から見積もられる(3)傘型噴煙への体積流量,といった観測データを定量的に正しく再現することができた。これにより,実際の観測データと定量的に比較可能な3次元噴煙モデルを世界で初めて作成することができた。さらに,3次元計算で得られた観測量と噴出条件の関係を用い,傘型噴煙半径が衛星等で測定できれば噴火の条件をPCレベルの計算機で見積もれる簡易な手法を提案した。地形や噴火強度の時間変化の効果などをさらに導入することで,日本でも数年置きに起こるような小規模な噴火への適用が可能となるため,今後のモデル開発にも発展性がある。 また,昨年度導入したワークステーションと可視化ソフトを用い,数百GBに及ぶ大規模シミュレーション結果の可視化を試み,噴煙などの乱流ジェット・プルームに特徴的な細かな渦から構成される表面構造を可視化することができた。これにより,よりリアリティをもって視覚に訴える火山防災システム等の構築につながる。
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