研究概要 |
本研究の目的は、日本全国から収集した胞状奇胎と呼ばれる特殊な検体を用いて、日本人集団のハプロタイプ構造を明らかにし、自然選択を受けた染色体領域と対立遺伝子(アリル)を検出することである。国際ハプマップ計画によって明らかとなった日本人のハプロタイプ構造は、親子関係にあるサンプルを用いることなく推測によって決定しているために、他の人種(欧米、アフリカ人)に比べて不正確である。また、日本人集団を反映したランダムサンプリング性についても懸念されている。そこで今年度は、ゲノムワイドに約28万個の一塩基多型(SNP)のタイピングを行って得た、決定的ハプロタイプ情報を基に、以下の解析を行った。 (1)連鎖不平衡係数(r^2)を指標とした日本人の決定的ハプロタイプ構造を明らかにし、この構造を基に、関連解析のシミュレーションを行った。原因変異の検出率を、ハプマップのデータを用いた場合と比較し、胞状奇胎がより有用なサンプルであることを示唆できた。 (2)ハプロタイプホモ接合伸長度の分布をハプマップの日本人検体から得たものと比較し、胞状奇胎が、より日本人集団を反映したランダムサンプリングであることを示した。 (1),(2)の結果は、データベース(http://orca.gen.kyushu-u.ac.jp)として公開し、論文に報告した(Higasa et al.,2007,Nucleic Acids Res.)。 (3)自然選択を示す統計量(REHH)をゲノムワイドに計算するプログラムを開発した。この計算結果を上記データベースに統合することにより各統計量を総合的に判断できるシステムへの発展を達成する。 (4)現在、更に50万個のSNPについてタイピングを完了した。今後、28万個のSNPデータと併せて、より詳細な日本人のハプロタイプ構造を決定すると共に、自然選択領域の検出を目指す。
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