本研究では、霊長類のサブテロメア領域の比較ゲノム解析を行い、種間で保存された領域と種特異的な領域を識別し、それぞれの領域に位置する遺伝子の同定、遺伝子と表現型との関連性を明らかにすることを目的として研究を行なう。 本年度は、既に単離していたヒトサブテロメア領域由来のゲノムクローンを用いて、FISH法によるヒト染色体へのマッピングを行い、それぞれの染色体上の位置とシグナルの蛍光強度を調べ、サブテロメア領域の類似性からヒト染色体のグループ化を行うことを目標に解析を進めている。現在までに、既存のサブテロメア候補クローン205クローンのうち72クローンについてFISH解析を終了した。FISH解析の結果、11クローンは染色体上の位置を確定できたが、残り61クローンについては、ほとんどの染色体(46本の染色体中、30から40本の染色体)のサブテロメア領域にシグナルを認め、ヒトサブテロメア領域間で相同性が高い領域由来のクローン群であることが判った。FISH解析を行ったクローンのうち、19クローンの高精度塩基配列を行い、塩基配列レベルでの相同性とFISH解析におけるシグナルパターンの照合を行っている。 また、チンパンジーのサブテロメア領域のゲノム構造解析を行い、ヒトとチンパンジーにおけるサブテロメア領域の比較解析を行った。まず、ヒト21番染色体に対応するチンパンジー染色体のサブテロメア領域をカバーするクローン地図を作成し、その領域の高精度配列決定を行った。得られた配列データを用いて、サブテロメア領域の構造を比較したところ、チンパンジーのサブテロメア領域は、ヒトのそれに比べて約160kbほど長いことが判った。現在、塩基配列レベルでの比較解析とアノテーションを進めている。
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