研究概要 |
本研究の目的は,DNAマイクロアレイによって計測された遺伝子発現量の時系列データから,遺伝子ネットワークの正規化ガウス関数ネットワーク(NGnet)モデルを同定することである.そのためにまず,遺伝子ネットワーク同定問題を関数近似問題として定式化した.その定式化に基づき,遺伝子ネットワークのNGnetモデルを同定するための方法を提案し,コンピュータ上に実装した.モデルパラメータの推定にはEMアルゴリズムが利用できることを示した.ただし提案手法では,パラメータ推定を失敗する確率を低減させる目的でDAEM(Deterministic Annealing EM)アルゴリズムを使用した.より妥当なネットワークを同定するために「遺伝子ネットワークは疎結合である」という事前知識を利用して遺伝子ネットワークを同定する方法を提案した. 提案手法の有用性を示すために人工的に作成した遺伝子発現量の時系列データから,遺伝子ネットワークのNGnetモデルの同定を試みた.その結果,S-systemモデルを利用した従来手法がおよそ73.8×30時間(PentiumIII 1GHz),ニューラルネットワークモデルを利用した従来手法がおよそ34.9×30分(PentiumIV 3GHz)必要とする問題を,提案手法はおよそ5.03×30秒(PentiumIV 3GHz)であることが分かった.提案手法が非常に短時間で遺伝子ネットワークモデルを同定することが明らかになる一方で,提案手法の問題点も明らかになった.具体的には1)同定されたNGnetモデルには非常に多くの偽陽性の相互作用が含まれること,2)妥当なネットワーク構造を得るためには提案手法は非常に多くの観測データを必要とすること,である.これらの問題点を解決することは来年度の課題である.
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