本研究では、当研究室で確認された、希少糖D-アロース(D-allose)の白血病細胞における癌細胞増殖抑制の分子レベルでのメカニズムを解明するため、SILAC法(Stable Isotopic Labeling using Amino Acids in Cell Culture)を用い、網羅的なタンパク量比較解析を行った。細胞培地に加える安定同位体ラベルしたアミノ酸に重水素ロイシン(deuterated leucine)を用いたところ、細胞増殖に対する影響は見られなかった。今回は、D-アロースを加えて5日間培養した後に細胞を回収して実験を行った。この時D-アロースを加えた細胞では約2倍程度の増殖抑制が見られる。四重極-飛行時間型ハイブリッド型質量分析装置(Q-tof2)を使ったLC-MS/MSによるタンパク質同定とLC-MSによる比較定量を行った結果、1273のペプチドについて比較可能であった。これにより、343種類のタンパク質の発現レベルの比較に成功した。SILAC法で得られた結果ウエスタンブロッティングと比較したところ、これを支持する結果が得られ、この方法の信頼性が確認された。D-アロース投与により、発現量に大きく差が見られた遺伝子を、シグナル伝達パスウェイデータベース上に反映させたところ、発現量が40%以上上昇した10個の遺伝子のうち2つが、DNA複製開始に関連する遺伝子であり、これらの遺伝子の関与が示唆された。
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