ダイズは開花結実後、急激な個体老化を起こす(一回結実性老化)。申請者らは従前の研究からこの老化には老化ホルモンとして有名なアブシジン酸とその活性を増強させる未同定のシナージストが重要であることを明らかにした。 本年度はクロロフィル保持試験を指標とした独自のシナジー活性試験法を用いて、ダイズ莢に含まれるシナージストの精製を行った。具体的にはシリカゲル、ゲルろ過等のクロマトグラフィーにより粗精製を施した後、逆相HPLCにより精製を行い、目的のシナージストとしてジャスモン酸を単離・同定した。ジャスモン酸がシナジー効果を示すという報告は今までに無く、本研究が初めて報告例である。次にダイズ植物体を用いた散布実験を行い、ジャスモン酸のシナジー効果を確認したところ、1μmol/Lの低濃度でアブシジン酸の老化促進活性を増強させることを確認できた。この結果はダイズ植物体内でアブシジン酸とジャスモン酸の協働効果により一回結実性老化が起きていることを強く示唆する結果である。 ジャスモン酸は傷害ホルモンなどとして知られる植物ホルモンの1つであり、多彩な生理活性が報告されている。しかし、その活性部位は各活性で異なることから植物中には多彩なジャスモン酸受容体が存在していると思われる。本年度は予定通り、シナージストの同定を完了させることができたので、来年度以降、その分子メカニズムを明らかにするため、シナジー効果のみを有するジャスモン酸誘導体の調製を有機化学的手法により行いたい。
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