ダイズは開花結実後、急激な個体老化を起こす(一回結実性老化)。申請者らは従前の研究からこの老化には老化ホルモンとして有名なアブシジン酸とその活性を増強させる2種のシナージストが関与していることを明らかにし、18年度の研究により、その1つをジャスモン酸であると同定した。 本年度はクロロフィル保持試験を指標とした独自のシナジー活性試験法を用いて、ダイズ莢に含まれる2つ目のシナージストの精製を行った。具体的にはシリカゲル、ゲルろ過等のクロマトグラフィーにより粗精製を施した後、逆相HPLCにより精製を行い、目的のシナージストとしてヒドロキシジャスモン酸を単離・同定した。現在ダイズ植物体への散布実験により、その活性を確認中である。ジャスモン酸類は老化活性をはじめとした多彩な生物活性を有することが報告されているが、今回同定したヒドロキシジャスモン酸の植物体内における役割は知られておらず、本成果は初めての報告例となる。さらに、我々は構造活性相関研究を行ない、老化活性とシナジー活性の構造活性相関が明らかに異なることも示した。この結果は植物中にその活性に応じた多彩なジャスモン酸類受容体が存在していることを強く示唆するとともに、多彩な生物活性を有するジャスモン酸類が植物中でどのようにしてその使い分けをしているかを知る手がかりとなるかもしれない。 来年度は本成果に基づき、シナジー効果のみを有するジャスモン酸誘導体の調製を有機化学的手法により行うとともに、ヒドロキシジャスモン酸生合成阻害によるアンチエイジング手法の開発研究に挑みたい。
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