ダイズは開花結実後、急激な個体老化を起こす(一回結実性老化)。申請者らは昨年度までの研究からこの老化には老化ホルモンとして有名なアブシジン酸とその活性を増強させる2種のシナージスト(ジャスモン酸、12-ヒドロキシジャスモン酸)を同定した。 本年度はダイズの生長に伴う両シナージストの変動を調べた。その結果、12-ヒドロキシジャスモン酸はダイズの老化開始時期に一過的に増加し、その量は10μmol/Lと植物体内で老化増強活性を示すに十分な量であった。一方、ジャスモン酸量は生育期間を通じて、その量は0.1μmol/L程度と少なく、また変動も小さかった。以上の結果、12-ヒドロキシジャスモン酸の一過的な増加がダイズの老化開始のシグナルである可能性が示された。一方、ジャスモン酸もシナジー活性を示すことを示しているが、ジャスモン酸は12-ヒドロキシジャスモン酸の生合成前駆体であることを考えると、生体内で後者へ変換されたための活性であり、実際の老化制御への貢献は小さいと判断した。この仮説を証明するために、ジャスモン酸と水酸化酵素阻害剤の混合投与による活性試験を行なう必要がある。さらなる研究を進めるためにはキラルなジャスモン酸誘導体の調製が必要であった。そこで、清田らの方法を参考に市販のジャスモン酸メチルから酵素反応を利用した光学分割を行い、キラルなジャスモン酸を得た。現在、これを出発原料に受容体特定のための合成研究を進めている。
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