前年度の結果より、転写因子GATA-1、Sp1の亜鉛フィンガードメイン同士でタンパク質間相互作用が生じており、GATA-1亜鉛フィンガー存在下において、Sp1亜鉛フィンガーのDNA結合能が上昇することが示唆された。そこで、Sp1亜鉛フィンガーのDNA結合能の上昇に寄与するGATA-1領域に関して検討を行った。GATA-1亜鉛フィンガードメインの欠失変異体および、DNA結合能の上昇を顕著に検出することのできる、Sp1亜鉛フィンガードメインを直列に連結した6-亜鉛フィンガータンパク質、Sp1ZF6を大腸菌発現系を用いて調製した。EMSAによりDNA結合能を調べた結果、GATA-1(208-304)、GATA-1(229-304)では、Sp1ZF6のDNA結合親和性の上昇が生じたが、GATA-1のC末端側の亜鉛フィンガーのみでは、その効果は認められなかった。Sp1亜鉛フィンガーのDNA結合親和性の上昇には、GATA-1のC末端側の亜鉛フィンガー領域に加えて、N-Cフィンガー間のリンカー領域が必要であり、この領域がSp1のDNA結合活性の向上を導くのに重要であることが示唆された。また、細胞内で人工転写因子として亜鉛フィンガーを利用できることも確認した。タンパク質間相互作用を利用することによって、より効果的な転写調節が期待される。天然においては、GATAファミリーは様々な転写因子と相互作用することが知られている。したがって、得られた知見は、亜鉛フィンガードメインのタンパク質間相互作用の理解に向けても、有用な情報を提供するものと考えられる。
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