研究概要 |
エラジタンニン類は植物が生産する二次代謝産物であり、一般に抗酸化活性を有することから、様々な慢性疾患の予防への応用が期待されている。特に近年では単一分子としてのエラジタンニンの生理活性が注目されており、更なる開発研究を行う上で、安定かつ純粋な化合物の供給を可能にする有機合成法の開発が求められている。特にエラジタンニンのグルコース部が通常では不安定なアキシャルリッチ配座(^1C_4/B)を有する天然物は、エラジタンニンの構造的特徴であるヘキサヒドロキシジフェノイル(以下HHDP)基の構築が困難である。すなわち、安定なエカトリアルリッチ配座(^4C_1)の、糖配座の反転を伴ったHHDP基の構築は困難であり、あらかじめ糖骨格を反転させる等の工夫が求められた。そこで、グルコースの2位と4位を架橋することで反転糖骨格を保持することを目指した。1,6-anhydro-β-D-glucoseの2,4-水酸基の架橋化を検討した結果、1,1,3,3-テトライソプロピルジシロキサニリデン架橋を高収率で構築することに成功した。続く1,6-アセタール開裂で得られた2,4-架橋グルコースは、1^H NMR結合定数の解析の結果、アキシャルリッチ骨格を保持していることを見出した。2,4-架橋グルコースは反転糖骨格を有するエラジタンニン類合成における有用な合成中間体となることが期待されるのみならず、糖骨格の配座制御を利用した立体選択的グリコシル化反応の開発への応用も期待される。
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