研究課題
イネ科植物は根からムギネ酸を分泌することによって、アルカリ土壌で水不溶態となっている3価の鉄イオンをムギネ酸・鉄錯体として植物内に取り込むことが知られている。本研究では、この鉄欠乏耐性のメカニズムの分子レベルでの解明を目指し、1)ムギネ酸誘導体の大量合成法の確立、2)推定構造してか分かっていないムギネ酸類・鉄錯体のX線結晶構造解析、3)トランスポーターと結合するムギネ酸類鉄錯体の設計と合成、の順に研究を行う予定であった。トランスポータータンパクとムギネ酸・鉄錯体の結合様式を明らかとするためには、標識体を始めとする種々のムギネ酸類縁体の合成が必要不可欠であることから、本研究においてムギネ酸類の効率的な合成法の確立は急務の課題であった。さらにムギネ酸類のその優れた金属キレート力を利用することによって、農業的利用や、医薬品への応用も示唆されていることから、工業的にも利用可能なルートを構築する必要があった。そこで報告者は、ムギネ酸と同様の金属キレート力を有する2'-デオキシムギネ酸の合成法の確立を目指し、市販のBoc-L-アリルグリシンを出発原料としてOne-Po-で2'-デオキシムギネ酸の保護体を合成する簡便な合成方法を確立した。本合成法では、市販の出発原料から目的の2'-デオキシムギネに至るまでの全工程において、抽出操作及びクロマトグラフィー操作は一度しか行わない簡便な合成法である。(特願:2006-307397)効率的合成法が確立した事から、ムギネ酸類への標識体の導入を試みることにした。しかしながら、ムギネ酸への標識体の導入には未だ成功例がないことから、先の合成法を基にして種々のムギネ酸類を合成し、その鉄取り込み活性を調べた。その結果、2'位水酸基の立体配置が活性に全く影響を及ぼさないことを新たに見出した。この知見を基に、今後2'位水酸基に標識体の導入を試みる。また鉄錯体のX-線結晶構造解析を検討中である。
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有機合成化学協会誌 65
ページ: 65-66
Bull. Chem. Soc. Jpn 79
ページ: 768-774