研究概要 |
本研究では、金属複合体を形成する植物花弁中の青色色素(ツユクサ、ヤグルマギク、サルビア)の構造を、X線結晶構造解析により原子レベルで明らかにする。最近、我々はヤグルマギク色素が分子量約9000Daの複合体であり、単独では赤いアントシアニンに鉄、マグネシウム、カルシウムの3種類の金属イオンとフラボンと呼ばれる有機物(コピグメント)が結合した構造をとることで青色を発色していることを示した(Structure of the blue cornflower pigment, Shiono, M., Matsugaki, N. and Takeda, K., Nature 436, 791, 2005)。ツユクサ、サルビアについて高分解能のX線結晶構造解析を試み、立体構造を明らかにするとともに、発色機構や安定性と構造との関連について共通性と特異性を見出す。 1.ツユクサ青色色素の精製・結晶化に関して以下を行った ○天然型ツユクサ色素の精製、結晶化 ○より高純度のアントシアニンを用いて再合成された色素複合体の精製、結晶化 ○色素複合体の核であるマグネシウムを他の金属原子(Ni、Cdなど)で置換した置換体の合成、精製、結晶化 ○生理条件に近い結晶化条件(弱酸性条件)化での結晶化(天然型) 2.ツユクサ青色色素結晶のX線結晶構造解析 ツユクサの色素結晶を高エネルギー加速器研究機構・放射光施設に持ち込み、1Åを超える高分解能でのX線回折データ収集を行った。天然型や再合成置換体を用いたX線結晶構造解析により、色素複合体中心の複核以外に金属占有サイトが存在することが明らかになった。金属占有サイトの構造の精密化を行い、ヤグルマ青色色素の構造との比較、発色機構や安定性と構造との関係などを中心に研究を進めている。
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