今年度はまず、破骨細胞の骨吸収を阻害する化合物のスクリーニングをおこなった。破骨細胞は、マウス骨髄細胞にTGF-βとM-CSFを添加してマクロファージ細胞に分化させ、次いでRANKLとM-CSFを添加することで調製した。天然化合物あるいは合成化合物ライブラリーから、破骨細胞形成阻害あるいは破骨細胞に対する細胞死誘導活性を指標に活性化合物を探索した。その結果、メチルゲルフェリンが破骨細胞形成を阻害することを見出した。象牙切片を用いたピットアッセイにより、メチルゲルフェリンはin vitroで破骨細胞の骨吸収を阻害することが明らかとなった。 そこで次に、メチルゲルフェリンの細胞内標的分子の同定を試みた。当研究室で開発された官能基非依存型光親和型低分子固定化法によりメチルゲルフェリンプローブを作製し、マクロファージ細胞の細胞抽出液を使ってプルダウンアッセイをおこなった。メチルゲルフェリンプローブの共沈物をSDS-PAGEやMALDI-TOF/MFなどで解析した結果、メチルゲルフェリンプローブ特異的に共沈するタンパク質として、Small glutamine-rich tetratricopeptide repeat-containing protein A、Glyoxalase I及びSterol carrier protein-2の3つを同定した。今後は、これらタンパク質の薬剤ターゲットとしての妥当性を検証し、さらにメチルゲルフェリンの癌細胞に対する効果等を検討していく予定である。
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