細菌由来の糖、及び含有糖鎖の医学、生物学的な重要性と特異な構造から、特に最近、C.jejuniより見い出された希少糖のBacillosamine(Bac)や、Pseudaminic acid(Pse)の合成研究を行こととし、安定な供給を行う目標である。そして含有糖鎖及び糖タンパク質等の構築を行う計画であります。それら希少糖、糖鎖及び糖タンパク質が人にはない構造であるので、抗菌剤の新規ターゲットとして、特にその生合成に注目致しております。糖鎖、及び糖タンパク質のプローブの調製に向け、本年度は糖鎖の効率的、かつ立体選択的構築が大きなポイントであると考え、併せて迅速な構築を意識し、主として以下の3テーマについての検討を遂行致しました。 1.希少糖の合成法の確立 細菌由来の糖鎖に含まれるBac類や、Pse類の化学合成に重要な1)窒素官能基の導入、2)デオキシ糖への還元反応、各種窒素上の官能基の変換法等、共通部分について検討を行い、Bacの合成に成功した。これにより量的供給が可能となった。Pse類の合成に関しては、市販の安価な6炭糖から出発した検討を進めており、鍵反応の3炭素増炭反応を攻略し、合成する計画である。 2.希少糖を含む糖鎖の合成検討 より複雑なBac類含有糖鎖7糖の合成検討に着手した。その鍵となるα-N-アセチルガラクトサミンの構築に、ペンタフルオロプロピオニル基を利用した簡便かつ立体選択的グリコシル化反応を見いだし、連続するα-N-アセチルガラクトサミン構造の構築に成功した。Bacの合成達成に伴い、Bac類含有糖鎖7糖合成も進行中である。 3.希少糖を含む糖アミノ酸の合成 Bacの合成達成に伴い、まずアスパラギンとの接続を検討した。N-結合型接続にはAllocアミノグリコシドを経由する糖アスパラギン合成法により、効率的な接続を達成した。 なお、細菌表層複合糖質の合成検討も行い、部分構造の糖鎖誘導体の合成にも成功している。
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