本研究の目的は、野生鳥類種の始原生殖細胞(精子や卵子の祖細胞)を繁殖力の高い家禽種の胚に移植して得られた個体(異種間生殖巣キメラ)から、野生種由来の配偶子が生産されるか否かを明らかにすることであった。ニホンキジ始原生殖細胞をニワトリ胚へ移植した雄個体の精液からDNAを抽出し、ニホンキジ特異的なプラィマーを用いたPCR法による解析の結果、ニホンキジのシグナルを検出した。次いで、生殖巣キメラにおけるドナー細胞の寄与率を知るために、標識した始原生殖細胞を移植し、生殖巣へ到着した個数を算出した。その結果、ごく少量の始原生殖細胞で生殖巣キメラが成立する可能性が示唆され、また、ドナー細胞は生殖巣到着後から高い増殖性を示すことが明らかとなった。少量の始原生殖細胞であっても生殖巣キメラを作出できる可能性を宗した意義は大きく、将来、希少鳥類種の始原生殖細胞から生殖巣キメラを作出する際に、貴重なドナー細胞を最大限に利用することが可能となる。本研究では、ドナー細胞由来の卵子を生産する雌の生殖巣キメラを判定するために、多量の卵黄を含む鳥類未受精卵からコピー数の少ないゲノムDNAの抽出を試みた。その結果、それらを鋳型としたPCR法によって遺伝子を増幅させることに成功した。ドナー細胞由来の卵子を生産する雌の生殖巣キメラを判定する方法の開発に貢献した。本研究期間では、生殖巣キメラへの人工授精による後代検定で、ドナー由来の表現型をもつ子孫個体を得ることはできなかったが、ドナー細胞の寄与率の高い雌雄の生殖巣キメラを作出・判定することが重要と結論される。
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