本研究は、事例・比較研究から東アフリカ小農による内発的発展の特徴とその地球的意義を明らかにすることを目的とし、本年度は、フィールド調査による事例研究の分析、及び比較研究を深めた。タンザニアにおける内発的発展全般については、国家政策、人びとの認識、さまざまなレベルにおけるアクターのあり方など総括的に分析した図書を出版した。〔研究発表 : 図書(5)〕 前年度に引き続きタンザニア南東部における内発的発展とジェンダーとの関連で分析した結果、貨幣経済の影響にもかかわらず、相互扶助意識が機能している本事例では、男女ともに食料生産に従事し、かつ重要視しているが、「女性が家事」「男性が貨幣獲得」という分業傾向も見受けられた。貨幣経済の浸透とともに、貨幣のために女性が男性に依存せざるを得ない構図も存在する。〔研究発表 : 雑誌論文(3)〕 コミュニティ内のジェンダーをはじめとする非対称性は、社会構造と深く関連していることが考えられるため、母系的社会として特徴付けられるタンザニア南東部において母系と父系の関係を分析した。まず本調査村に多数居住しているムウェラは、母系氏族ウコーのみならず父系氏族キラワも継承しており、同地域の他民族とは異なる二重単系が見出された〔研究発表 : 雑誌論文(1)〕。さらに氏名継承については、イスラム化によって、イスラム名の使用のみならず、名前の父系継承も徹底してきた〔雑誌論文(2)〕。事例として研究してきたタンザニア南東部は母系的社会としでの特徴を有するものの、父系的影響による変容のみならず民族間の差異も明らかとなった。 上記の通り、前年度までに明らかにしてきた東アフリカ小農による内発的発展の特徴とその地球的意義に加えて、その課題でもあるコミュニティ内の社会構造や非対称性についても明らかにしてきた。
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