平成19年度においては東南アジア側に注目し、インドネシアで調査・情報収集を行った。ここでの目的は、ハドラマウトの宗教学校、タール・アル=ムスタファーの卒業生に聞き取りを行い、卒業後の進路に関する情報を収集すると同時に、ハドラミーがインドネシアで出版している書籍を収集することであった。 しかし、研究代表者によるインドネシア調査期間は、前年度に調査を行ったタール・アル=ムスタファー学長のウマル・ビン・ハフイーズ(ハビーブ・ウマル)氏の東南アジア訪問と重なっていた。そこでジャカルタ郊外で開催された、ウマル氏とインドネシアの宗教教師の集会にオブザーバーとして参加し、集会のプログラムや参加者の傾向、ウマル氏による講演の内容を調査した。同時に、ウマル氏の東南アジア滞在中の旅程に関しても情報収集を行った。 ジャカルタにおいては、アラブ有力者のアブドゥルラフマーン・アル=アッタース氏に面会し、インドネシアからハドラマウトの宗教学校に学生を送り出しているシステムの変遷や、奨学金の状況について聞き取り調査を行った。ハドラマウトと東南アジア間のネットワークは過去のものという認識がまだある中、1990年代以降のネットワークの状況を調査したことは、ハドラミー・ネットワークの、現在までつながる歴史を議論する上で意義深いといえる。 また、ジャカルタとスラバヤにおいて、ハドラミーが出版しているアラビア語、インドネシア語の書籍を購入し、東京外国語大学図書館に収めた。前年度にハドラマウトで収集した書籍と合わせると、東京外国語大学図書館はハドラマウトとハドラミー移民に関しては世界でも有数の蔵書数を誇る図書館になると考えている。
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