研究課題
今年度は、インドネシアのバリ島およびマレーシアのサバ州西岸においてフィールド調査を実施した。インドネシアでは、主にカンゲアン島出身のサマ人のバリ島における経済活動と、かれらの宗教ネットワークについて調査した。〔経済活動〕バリ島におけるサマ人の経済活動は、(1)ハタ科の魚の仲買、(2)行商、(3)マグロ漁業、(4)観光みやげ販売の4つにわけられる。いずれの活動も1990年代半ば以降に広まった。(3)を例として挙げると、その従事者の増加は、80年代末に始まるバリ島のインフラストラクチュア整備を大枠の背景とする現象である。〔宗教ネットワーク〕バリ島におけるサマ人の経済活動の広まりは、イスラーム活動の拡大にも結びついている。カンゲアン島においてはイスラーム協会(PERSIS)がダクワ運動を率いている。ダクワ・ネットワークは1990年代から、広域に及ぶようになった。このダクワ運動を資金面で支えているのが上記(1)〜(4)の経済活動なのである。以上のように本調査では、カンゲアン諸島のサマ人の経済活動の変容、さらには宗教ネットワークの再編が、バリ島の観光開発を含むインドネシアのマクロな開発過程と密接に関係していることが明らかにされた。マレーシアでは、サバ州西岸のサマ人集落において「民族」意識の動態に関する調査を行い、(1)「先住民」意識の生成=「移民」の差異化、(2)移民イスラーム指導者の周辺化など、東岸と共通する変化がみられること、こうした変化が新経済政策ならびにイスラーム制度化政策を背景としていることを明らかにした。その他、下記の英文報告書や学会等において、昨年度までの調査結果の一部を公表した。11月23日に開催した国際会議には、別の資金によりマレーシアのカウンターパートを招聘し、調査成果について意見交換を行った。
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『東洋大学アジア地域研究センター 2007年度学術フロンティア報告書』
ページ: 70-85
Proceedings of "A Preliminary Study on Transnational Communities in Asian Peripheries: Perspectives from Comparative Area Studies
ページ: 11-23