平成18年度には、現代上座部仏教における比丘尼復興運動とその連携について、3度にわたって海外調査を行った。 まず、平成18年7月には、マレーシアで開催されたSakydhita International Conference on Buddhist Womenに参加した。この会議において、タイを代表する学僧プッタタート比丘の比丘尼復興に関する見解と、修行生活において不利な社会的条件の下にある女性仏教修行者の支援策に関する研究を報告した。また、この会議に参加したタイ、スリランカ、ベトナム、韓国、マレーシア等の尼僧・在家女性に対し、聞き取り・意見交換を行った。 次に、平成18年9月上旬に、タイにおいて比丘尼復興運動の進展状況に関する調査を行った。タイでは、全国に比丘尼、沙弥尼として出家した女性の数が拡大し、あわせて29名に上っていた。タイでは、比丘尼復興に対して、既存の比丘サンガによる承認が得られていないため、比丘尼受戒のための条件を十分に整えることは困難である。そのため、沙弥尼として数年間の準備期間を経過した女性たちの一部が、得度式の手続き用件の一部を捨象して、比丘尼戒を受けるという現象が見られた。また、一部の比丘尼、沙弥尼の中には、十分に社会的な認知を受けることができず、都合に応じて衣を取り替えるものや、メーチーに戻るものも見られた。 平成18年9月下旬には、韓国のソウルにおいて、上座部比丘尼復興運動に関する調査を行った。1996年に現代上座部仏教の比丘尼復興の先駆けとなったスリランカ人女性クスマ・ディヴェンドラ比丘尼の授戒会のサポートを行った相源法師、また1998年の国際比丘尼授戒会のサポートを行った韓国曹渓宗の全国比丘尼会の責任者に対し、当時の状況について聞き取り調査を行った。また、中央僧伽大学教授の本覚法師に対し、韓国仏教史の概略について教示を受けた他、本格法師の研究班が行った比丘尼に関する韓国新聞報道資料集の中から、韓国比丘尼による外国人仏教徒女性の得度に関する記事の収集を行った。
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