本年度には、主として5つの研究活動を行った。まず、平成20年2月と5月に、京都大学と上智大学で開催された東南アジア研究者を主たる対象とした研究会・講演会で、タイ・スリランカ上座部仏教における比丘尼サンガ複興について、研究発表・講演を行った。第2に7月初旬、モンゴル国ウランバートル市で開催された第10回サキャディーター国際女性仏教徒会議に参加し、上座部仏教の比丘尼サンガ復興における受戒の正当性の問題について、研究成果報告を行った。その際、会議開催国であるモンゴル国の尼僧や一般女性仏教徒と接する機会を得、チベット仏教の系譜に属するモンゴルの尼僧たちも、出家者としての地位を巡って、上座部仏教の尼僧たちの経験に類似した経験を有することを知った。それ故、今年度第3の研究活動として、モンゴルの仏教復興と尼僧に関する論考を執筆し、学内の紀要に掲載した。第4の研究活動として、タイ上座部仏教における比丘尼サンガ復興に関して、日本語の論文を執筆し、東南アジア学会の学会誌『東南アジア歴史と文化』に投稿した。この原稿は、掲載可とされ、平成21年5月判行予定である。第5の研究活動として、平成21年3月にインド・サールナートに出張し、現代上座部仏教における比丘尼サンガ復興の先駆けとなった1996年比丘尼受戒式に関して、受戒式を開催したマハーボーディー協会の高僧および当時受戒したスリランカ人比丘尼に対し、聞き取り調査を行った。
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