最終年度である本年度は次の研究を実施した。 (1)韓国での現地調査および文献調査:釜山・東莱(慶尚南道)、尚州(慶尚北道)において、「密造」および酒造業者についての聞き取り等の現地調査をおこなった。釜山の市立図書館等、ソウルの図書館、古書店等において文献調査を実施した。 (2)台湾での文献調査:台北の国立台湾図書館、台湾大学図書館、南投の国史館台湾文献館で戦前の酒造関連の資料、糖蜜移出関連の資料、無水酒精(アルコール)についての資料をまとめて収集した。台中の埔里酒廠・酒文物館で酒造史の調査をおこなった。 (3)イギリスでの文献調査:大英図書館、ロンドン大学SOAS図書館等で、19〜20世紀の欧米人による朝鮮旅行記や報告書を網羅的に閲覧し、そこで記述されている酒文化の記述を収集した。 (4)朝鮮の酒造業に関連して、戦前に朝鮮酒造協会、朝鮮醸造協会などが発行していた雑誌の目次入力作業を完了した。また、コピーした資料などを、ドキュメント・スキャナを用いて、PDF化する作業を実施した。 (5)石川県での文献調査:金沢の石川県立図書館等において、朝鮮に渡った能登杜氏関連の文献調査をおこなった (6)複数の研究会で、進行中の研究について発表した。 (7)2年間の調査研究の成果にもとづいて、残された作業を中心に研究計画を立案した。 以上の調査内容は、いずれも酒造・酒造業を中心にした分厚い社会史的な叙述を完成させるのに不可欠のものであり、これらにさらなる情報を補充して、体系的な学術書として出版する所存である。
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