1.文献資料調査については、これまで集積してきた文献資料に加えて、国内(国立民族学博物館図書室・京都大学東南アジア研究所図書館・アジア経済研究所図書館)およびシンガポール(シンガポール大学図書館・東南アジア研究所図書館)・マレーシア(マレーシア国民大学図書館・マラヤ大学図書館)で文献資料の収集を試みた。具体的には、サバ・サラワク州を含むマレーシア全体および東南アジア(場合によっては中国を含む)におけるキリスト教宣教の歴史的展開についての文献資料の収集を実施した。そして、これらの文献資料に基づいて、東南アジア、特に、マレーシアのキリスト教の歴史的展開について整理・分析する作業を進めた。 2.現地調査については、予算の関係もあり、本年度は、シンガポールとマレーシアのマレー半島部に限定した。シンガポールやマラッカなど、キリスト教宣教の歴史に関わりが深い旧殖民地都市を訪問した。また、オラン・アスリ集落への短期のフィールド・トリップ(10日程度)を試みた。 3.マレーシアにおける現地調査で確認したことは、(1)オラン・アスリばかりでなく、マレー人の間でもキリスト教宣教活動が実施されていたこと、(2)オラン・アスリのキリスト教改宗者が増加していたこと、(3)イスラーム改宗者がキリスト教へ「再改宗」した事例やキリスト教へ改宗したもののすぐに棄教してしまった事例、(4)改宗の動機は、経済的要因や病気の治療であること等々が確認された。全体的に見れば、改宗の状況は依然として流動的である。
|