研究概要 |
本研究では、近年の母子世帯を対象とした社会政策の転換、すなわち、所得保障制度(主として児童扶養手当)の縮小と就労支援策の拡充が母子世帯の生活や労働に与える影響を分析した。とくに、母子世帯の生活状況を生活時間の観点から検討を加えた。 日本の母子世帯の母の仕事と育児の時間配分を欧米諸国の場合と比較すると、日本の母子世帯の母は顕著に仕事時間が長い一方、育児時間が極めて短い仕事中心の生活となっている。また、時系列変化をみると、日本の母子世帯の長時間労働、短い育児時間の生活パターンは、近年よりその傾向が強まっていることが明らかになった。 生活時間分析の結果から得られる政策インプリケーションは、まず、母子世帯の母の仕事時間を短縮し,育児時間を確保すること、言い換えれば、母子世帯の母のワークライフバランスを確保するための政策的支援が必要である。具体的には、柔軟な労働時間を選択できるようにすることや、子どもの病気など突発的な事情での休暇取得を可能にするための支援が挙げられる。また、母子世帯の母のワークライフバランスを保つために仕事時間を短縮した場合の減収を補〓する所得保障を伴わせることである。就労率が高く、労働時間が長く、貧困率が高いという日本の母子世帯の特徴をふまえると、所得保障の存在は欠かせない。くわえて、近年重点的に実施されている就労支援策の利用者が少ないことの要因の一つには、職業訓練等を受ける時間を確保することが困難なほどの長時間労働にあることが示唆される。
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