近代日本における買売春は、江戸時代後期に成立した公娼制度を基盤とし、明治期から戦後の売春防止法成立(1956年)まで、国家公認の制度として管理/保護され、存続してきた。公娼制度の周辺には、無許可で営業を行う私娼が存在し、また芸者(芸妓)や酌婦、女給といった男性向けの飲食店で働く女性たちにおいても、半ば公然と買売春が行われてきた。さらに、国内の買春業者に伴われて海外へ渡る「在外売春婦」も数多く存在した。本研究は、戦前期の日本における買売春を主目的とした人身売買問題の実態と社会的構築過程を、社会史的アプローチによって解明しようとするものである。 平成19年度は、廃娼運動ないし純潔運動を先導した女性団体、社会運動団体の関連資料の収集・整理を中心に行なった。 戦前期の廃娼運動(およびそれに続く純潔運動)を担った主な団体としては、基督教婦人矯風会、救世軍日本、廃娼連盟、廓清会、愛国婦人会、が挙げられる。このうち、矯風会に関して、国立女性教育会館女性アーカイブセンター寄贈された売春防止法関連資料の整理を行い、資料解題をまとめ発表した。
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