本研究は、長い二重鎖DNAの高分子と、厳密に帯電したシリカナノ粒子(NP)との複合体に関して、人工クロマチン(染色体)のモデルとしての新しい生体模倣ナノ構造物を創製し、複合体構造制御のメカニズムを理解することを目的とするものである。具体的には、DNAと相互作用させるナノ粒子は、未修飾のシリカナノ粒子(直径7-100nm)の表面上に適当な正電荷をもつ高分子をイオン結合させる方法を用いて作成した。DNAと反応するナノ粒子の直径によって、ナノ粒子が有するDNA凝縮転移活性とDNA相互作用メカニズムが大きく異なっていた。 ナノ粒子のサイズによって、三種類のDNA-ナノ粒子複合体が発現された。大きいナノ粒子の場合(100nm)、DNA鎖がナノ粒子の表面全体に吸着して、タイプ1(adsorption)複合体が形成した。しかし、二重鎖DNAの半屈曲性のため、ナノ粒子のサイズが縮小する際に、上記の相互作用メカニズムが実現しない。実際は、DNA鎖が40nmナノ各粒子の円周線に沿って巻き付けて、タイプ2(wrapping)複合体が形成する。タイプ2DNA-ナノ粒子複合体構造が生体クロマチンのナノ構造(beads-on-a-string)を模倣して、同様な物理性質をもつ(塩濃度依存性等)。最後に、最も小さいナノ粒子(10nm)にDNA鎖が巻き付けず、DNA鎖に沿うって、タイプ3(collection)複合体が生成する。この三つメカニズムの発生が分子動力学計算法で確認された。 ナノ粒子サイズによって、様々なDNA相互作用メカニズム発現の結果として、DNA鎖凝縮の際における転写活性阻害度の大きな変化が測定された。大きいナノ粒子は、微量でもDNA転写活性を効率的抑制するが、対照的に、小さいナノ粒子の高濃度までに、DNA転写活性がほとんど変化しない。この研究の主な成功としては、ナノ粒子サイズ変化により、DNA転写反応の制御が可能になった。特に、小さいナノ粒子を用いると、生体クロマチンと同じように、DNAが凝縮される際にも、転写活性がONとなる。
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