平成18年度は次の2点に関して研究を遂行した。第一に、家族主義的福祉レジームに関する先行の理論研究の分析。第二に、文献調査を通じた、今日のイタリアにおける介護の担い手に関する現釈把握である。そのうえで、これらの二点の比較から、当該理論研究において、十分な分析対象となっていない介護の担い手に関する現状を中心に、その問題点を整理した。 平成19年度は昨年度の研究成果を踏まえ、第一に、イタリアの介護の担い手として重要な役割を占めるに関し、文献調査を通じて、その精査を行った。そして第二に、広義の介護関連施策として、移民の家事・介護労働者に対する支援策がいかに展開されているかについて10月に現地調査を行った。 第一の移民の家事・介護労働者を取り巻く状況に関しては、ここ数年で、大きく研究の進展がみられる。これによって、当年度は、従来殆ど明らかにされてこなかった闇市場の労働者の実態が整理された。加えて、いわゆるグレーゾーン領域の労働者の就労状況、ならびに雇用関係と、その背景についても現状の把握が可能となった。結果として、近年、イタリア中北部の大都市に家事・介護労働者が急増していること、また2002年の正規化施策以降には、むしろ非合法的な滞在件数が増加する傾向があることに加え、グレーゾーンの就労状況も改善されていないことが明らかとなった。 第二の移民の家事・介護労働者に対する支援策に関しては、イタリアの都市部を中心に、現地でのヒアリング調査を行った。調査対象は、移民女性の支援を行い、市と協働で移民介護労働者の就労支援を行っているNPO団体、市が設置した移民家事・介護労働者の求職と各家庭の求人間のマッチングを行う介護者窓口、また各県内に設置された、雇用センターにおける移民家事・介護労働者の就労支援窓口である。 調査の結果、家庭内での家事・介護労働全般に関する求人と求職のマッチングを行う「介護者窓口」は、比較的多様な運営形態ではあるものの、原則として公的施策として普及しつつあることが明らかとなった。
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