ベルクソン哲学が指し示す「開かれた宗教」において可能となる「愛と行為」の関係を探求した。生の根源から流出した愛が個人の実存において分有され、さらに他者へ、また身体を介した愛の行為として世界へと開かれて過程を、とくにキリスト教神秘主義との関連において精査した。そのために、ベルクソンの著作、特に最後の主著を詳細に分析するとともに、必要となる基礎的な情報収集を以下で示すように各地で行った。 1、フランス国立図書館、ソルボンヌ大学図書館などにおいて文献を複写。 2、パリ、高等師範学校においてSociete des amis de Bergsonの発会式に参加。各地のベルクソン研究者と情報交換。 3、スイス・ジュネーヴのベルクソンの山荘跡において、現所有者と、ベルクソンと国際連盟との関わりが持つ意味について情報交換。ベルクソン哲学が社会へと開かれていく一つの契機について貴重な発見があった。 3、ベルクソンが開かれた宗教の最も発展した例として高く評価しているスペイン神秘主義、とくに十字架のヨハネとアヴィラのテレサの事跡を調査するために、スペインの諸都市(マドリード、グアダルーペ、トレド、アヴィラ、セゴビア、サラマンカ)を訪問。各地で文献を収集。特にサラマンカ大学において専門の研究者と情報交換。観想修道会の改革者であるカルメル会員がイスラム教との対抗関係、対抗宗教改革の波、大航海時代などの時代状況の中で、愛を内的な精神状態にとどめず、具体的かつ積極的な行為として世界へと開かれていった過程を、文化的・政治的・時代的背景から明らかにした。
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