身体論を、特にベルクソンの「大身体」という概念をキーワードに考察した。特に、知覚という形で我々のいわゆる狭義の身体から溢れ出てゆくもの、すなわち我々を取り巻き我々に与えられている環境と身体との関係を、主に現象学の観点から精査した。そのために、メルロ=ポンティの「肉」の存在論がベルクソンの大身体から受けた影響と差異をあきらかにし、それによって、身体と精神、自己と他者の境界線上にあるもの、そのような境界線を無意味にするものの存在について解明した。 この研究のために、ベルクソンとメルロ=ポンティの著作を中心に諸文献を分析するとともに、必要となる情報収集を以下で示すように各地で行った。1、フランス国立図書館、パリ第4大学図書館等において文献を収集。2、フランス学士院にてベルクソニズムを巡るコロックに参加。各国からの参加者と情報交換。3、ルーアンにてベルクソンが言及レているフランス神秘主義の特異な例であるジャンヌ・ダルクの事跡について現地調査。4、パリにて、世俗道徳と宗教を巡る19世紀のフランス社会の雰囲気について調査。5、東京・京都において開催された。『創造的進化』出版百年紀念コロック、『道徳と宗教の二源泉』のワークショップに参加。フランス、イギリスなどから来日した専門家と意見交換。
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