ベルクソンの人格論と、それに大きな役割を果たしている身体との関係を、宗教をフィールドにしつつ、主に社会学との対比において考察した。人格とは社会の中にあって独自な存在である個人を可能にするものであるが、他者と共通した世界から一個の人格を切り出してくるものは身体である。本年度は、このような個人と社会との関係の問題を、主に社会の側から見る視点、すなわち社会学、とくにベルクソンの同時代人E.デュルケムとの比較という方法によって研究した。デュルケムの宗教社会学において、人格概念が人間性一般の内に解消されてしまうのに対して、ベルクソンは人類の普遍的道徳、開かれた宗教を志向しながら、その基盤を個人の人格の内に置く。宗教を場として展開される二者の人格についての思想に見られる共通性と差異性の解明から、一定の閉ざされた構成員からなる現今の社会を超えた視点を導入する必要性が浮かび上がった。 この研究のために、ベルクソンとデュルケムの著作を中心に諸文献を分析するとともに、必要となる情報収集を以下で示すように各地で行った。 1. フランス国立図書館、パリ第四大学図書館、ローマ州立図書館等において文献を収集。 2. ボルドーにて、第三共和政当時の世俗道徳と宗教を巡る社会情勢について調査。 3. ローマにて、ベルクソンが言及するカトリック神秘主義、特にカルメル会の思想について現地調査。 4. 東京において開催された国際シンポジウム「東アジアにおけるベルクソン『創造的進化』の受容と展開」に参加。Su-Young Hwang氏の発表原稿""Bergson et Deleuze autour de L'evolution creatrice>>を翻訳。"
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