本研究は、19 世紀のフランスの科学哲学者クールノーの科学哲学の全貌を描き出すことを目的としたものである。そのために、ほぼ彼と同時代に生きつつ彼とは異なった科学哲学を築き上げ、実証哲学の祖となったオーギュスト・コントの科学哲学との比較を出発点に研究を行い、しかる後に、同時代の科学的知見をクールノーがいかに吸収して自らの科学哲学を構築したかを研究した。こうした手法を通じて、クールノーの科学認識論の前提となる合理主義的な世界観を素描すると同時に、特に彼の「偶然」の哲学、ならびに「偶然」を扱う確率の哲学を素描した。また「偶然」を認める彼の哲学が、独自の生命哲学、社会哲学を可能にしたこと、ならびにその形成過程における論理展開を明らかにした。
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