本年度(2006年度・平成18年度)は、古典文献学的側面と現代論理学や科学、とりわけ情報科学の側面から、知識論とその方法論に関する研究を軌道にのせるための作業を行った。 前者についていえば、ランベルトの主要著作『新オルガノン』を中心に、ドイツ学校哲学の哲学者であるヴォルフやバウムガルテン、マイヤーの論理思想、および、カント哲学との関係を整理し、ライプニッツからランベルトへ至る思想史的究明を軸に研究をすすめた。 ランベルトの著作とそれに関連する二次文献を収集し、彼の思想形成が、どのような時代背景と知識論の下でなされたかについて、資料を精査した。科研費予算において消耗品の経費を使い、こうした資料、著作を出来る限り集めた。 また、ランベルトの『新オルガノン』の部分訳とともに、マイヤーの『理性論綱要』の翻訳にも着手している。 後者の研究に関していえば、フレーゲからラッセル、クワインへといたる思想史の流れを解明し、脳科学や情報処理認知科学の問題点を探る研究をすすめている。特に、ウィーン学派のカルナップの思想にヒントを得て、近世ドイツの知識論に対する比較思想史的視点を構築するように努めた。 また、カントの「超越論的反省」の理論に関する論文を執筆し、その中で、近世知識論と現代科学哲学との間にある認識論的問題の差異を浮かび上がらせるよう努めた。
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