本年度は、前年度に着手した、ドイツ近世哲学における論理思想の研究を、現代哲学との関係も視野に入れつつ、おこなった。ランベルトの著作『オルガノン』の研究を、前年度に引き続きすすめた。また、2008年度は、ランベルト以降、ドイツ観念論の時代に傍系とみなされていたドイツの論理学思想、とくに、バルディリの文献を入手し研究を着手した。 また、カント研究をランベルト研究と関係させられるように努めた。その際、カントの使用する術語、「理性」、「悟性」を軸に、それらの用語が論理形式の中でどのような使われ方をしているのかに注目するとともに、カントの理性批判の自己言及的構造に着目し、その構造が、ランベルトの言語哲学とどのような点で異なるかについて、理解が深まるように文献を調査した。 また、情報学的観点からは、アルゴリズムの限界と意識の問題に着目し、離散的言語・論理の問題と、それを超える連続的世界の問題を、さしあたり、ゲーデルの業績を踏まえつつ理解することに努めた。 なお、カント哲学については、上記の問題を視野に入れ、論文を執筆した。本論文は、これまでのカント研究の「総まとめ」にあたるとともに、ランベルト哲学との異同を明らかにするための序論的役割もになっている。
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