本年度(平成20年度)は、本科研費の最終年度であったため、これまでの研究成果を論文としてまとめることを第一に研究を遂行した。ランベルトの主要著作『新オルガノン』については、その全体像がほぼ把握できたので、カントとの「往復書簡」を扱うことで、ドイツ学校哲学・啓蒙期の哲学の輪理思想、および、思想史的背景を明らかにした。ランベルトの哲学には、カントとは異質の方法論が存在する。それは、数学的方法と哲学的方法を明確に分けるか否か、である。カントは、数学的方法とは別の方法に従う学問として哲学を位置づけた。これに反して、ランベルトは数学的方法に哲学的方法を従わせ、複合領域的学問としての哲学を構築しようとした。以上の点についてのより掘り下げた考察は、次年度に公開予定の論文においても論じられている。なお、情報学との関係においては、その導入として確率論的、量子論的時間論についての考察を行った。その序論的な究明を、確率論と量手論との橋渡しとしてのファインマンの経路積分に着目することで進め、成果を得た。
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