研究概要 |
テクスト校訂の基礎作業である写本蒐集作業として, 夏に, ネパール現地写本調査旅行を行った. ネパール国カトマンドゥでは, ドイツ政府のネパール研究センター(Nepal Research Centre)およびネパール国立公文書館(National Archive)を訪問した. 主目的はシヴァ教古写本の調査である. 現地スタッフの協力の下, ネパール・ドイツ写本保存プロジェクトが撮影した写本複写を入手するという所期の目的を果たした. デジタル化した写本画像データを入手することができたのは幸いであった. シヴァ教文献研究としては, ポンディシェリのフランス極東学院所長のドミニク・グッドール教授, 京都大学の横地優子准教授, ディワーカル・アーチャーリヤ博士との共著で, シヴァ教論書の校訂・英訳を完成することができた. 同時に, 同書の和訳も作成し, 九州大学インド哲学史研究室発刊の『南アジア古典学』より成果を公表することができた. 従前より蓄積してきた写本研究の成果として, 後9世紀頃の論理学書『論理の花房』の「意味論」を扱う一章(アポーハ論批判)を, これまでに蒐集した写本に基づきながら校訂し, 『東洋文化研究所紀要』より出版することができた. また既に出版した同書の校訂本, その「主宰神批判」章については, 写本研究に続いて訳注研究を行い, その成果を九州大学文学部発刊の『哲学年報』より出版しえた. 以上のように,インド哲学文献の写本研究, 訳注研究という基礎作業について所期の成果を挙げることができた.
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