平成19年度は、前年度に実施した慧遠(523〜592)・智〓(538〜597)・吉蔵(549〜623)・道綽(562〜645)を中心とする同一仏典に対する彼らの注釈書の解読・情報抽出、著作時期や地理的条件を考慮した形態・内容の分析、引用文献や共通課題の抽出とその処理方法の比較に関する成果として、隋代仏教の共通課題とその処理方法に関する「隋代仏教における三身解釈の諸相」(『龍谷大学論集』第471号)と、経典の性格規定に関する「隋代仏教における『観無量寿経』理解-慧遠の「五要」を中心として-」(『仏教学研究』第64号)を発表した。 また、前年度に研究対象資料としたもの以外の慧遠・智〓・吉蔵の著作類(慧遠撰『大乗義章』や吉蔵撰『三論玄義』『大乗玄論』などの綱要書、『摩訶止観』など智〓関係に多くみられる実践書など)についても、同時代的視座からの解読・情報抽出を行い、引用文献名(自著も含む)・人名および引用文(自著も含む)の抽出を進め、前年度の成果に組み合わせて、その整合性を検討した。 この成果の発表については、現在、慧遠・智〓・吉蔵・道綽を中心とする隋代仏教関係の著作類にみられる引用文献および引用文に関する論文を準備している。さらに、隋代における仏典注釈の流行と急速な教学形成の要因や隋代仏教における教学的情報網なども分析した上で、同時代的視座からみた隋代仏教の教学形成過程の研究総括を行うとともに、これまでの筆者の唐代仏教教学研究の成果も活用しながら、隋唐仏教の教学研究方法への提言を行うための準備をしている。
|