平成20年度は、前々年度に研究対象とした同一仏典に対する注釈類、前年度に研究対象とした綱要書や実践書から抽出された情報をもとに、著作時期や地理的条件を考慮した形態・内容の分析、引用関係や共通課題の抽出とその処理方法の比較を継続的に行った。 また、その過程で、関係がみられなかった要素や新将来仏典に説かれる新説(三身説など)への移行方法についても検討する中で、特に、隋代仏教において急速になされた二身説から三身説への移行方法に関して特徴的な点がみられた。そして、その研究成果として「隋代仏教における真・応二身説」(『仏教学研究』第65号)を発表した。 そこでは、従来、二身説から三身説への移行という観点から論じられてきた隋代仏教における仏身観の変容について、この変容が果たして三身説導入以前に定型化されていた二身説というものを前提としていたのか、という問題意識から、隋代仏教において二身説の一つの定型となっている真・応二身説とその周辺の記述を、慧遠(523〜592)・智〓(538〜597)・吉蔵(549〜623)の著作から抽出し、検討した。その結果として、真・応二身説を軸にみていった場合、中国における体系的な二身説や三身説は、ともに隋代仏教を中心に確立されたものであり、慧遠を端緒としながら、隋代仏教の共通課題として、「多様化した仏身観に対応する」という認識のもとでなされた同時代的・同意義的作業であったと考えられることを指摘した。 成果報告書では、同時代的視座からみた隋代仏教の教学形成過程の研究総括を行うとともに、これまでの筆者の唐代仏教教学研究の成果も活用しながら、隋唐仏教の教学研究方法への提言を行う。
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