19世紀アメリカの代表的女性誌である『ゴーディズ・レディズ・ブック』の1840年代を中心とする言説とイメージの分析を通じて、以下の点を明らかにした。まず同誌は、アメリカで初めてオリジナルのファッション・プレートを掲載した女性誌として、ヨーロッパのファッションとの差別化を図りつつ、ファッション・プレートの掲載を精力的に推進し、アメリカ型のファッションを作り出した。その歴史的プロセスを、論文「正統なるファッションとは-『ゴーディズ・レディズ・ブック』のファッション・プレートをめぐる言説」において明らかにした。また同誌は、ファッションの推進を家庭装飾の意義と重ね合わせることによって、着飾るように周囲をも飾り付ける行為、すなわち「自他を飾る」行為を女性の仕事として位置づけた。その考察結果を、論文「19世紀アメリカの女性と装飾-『ゴーディズ・レディズ・ブック』の言説を通じての考察」としてまとめた。さらに、「ファッションと女性」の関わりという視点から『ゴーディズ・レディズ・ブック』にアプローチすることの学術的意義についてを、論文「ファッション史の相対化の試み-『ゴーディズ・レディズ・ブック』を手がかりに」において論じた。まさに19世紀アメリカで出版された女性誌である同誌の考察を通じて、パリ・ファッションを中心に、女性服発展の歴史として記述されてきた近現代ファッション史の前提を問い直す試みが可能となることを明らかとした。以上の研究成果を通じて、『ゴーディズ・レディズ・ブック』という雑誌の言説空間において、近代的女性像の形成されるプロセスを明らかとした。同時に、近代においてファッションと女性との関係性が構築される-プロセスが明らかとなった。
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