武蔵の美術大学に所蔵されている雑誌『工芸ニュース』を創刊号より戦後まで調査分析し、「モダン・ジャポニスム」の議論に重要であると思われるテキストの抽出を行った結果、議論は3段階(19世紀的ともいえる伝統的造形をさらに追求する初期、日中戦争から第二次世界大戦直後までつづく「東洋的」日本趣味の造形を追求する帝国主義的デザイン議論、そして1950年代を中心に改めて日本的造形をモダニティのなかに位置づける「ジャパニーズ・モダン」の議論)にわけて把握することができると判明した。また、この間にさまざまな意味づけを与えられた「工芸」という問題を多く含んだ言葉の意味の変遷も同時に考察した。さらに、一連のモダン・ジャポニスムを考察する上でとりわけ代表的ととらえられるのが竹材製品であり、それにたいする海外デザイナーの関心という外からの働きかけをうけて、日本国内での議論が熟していった様子解明できた。 研究成果の一部の発表として、2007年5月から7月にかけて金唐革紙の展覧会がロンドンの大和日英基金の主催で行われた。その際に、展示会場て特別講演を行った。また、日本工芸の輸入に大きく関わっていたリバティ紹介の専門家ソニア・アシュモアや『ステューディオ』の創刊者チャールズ・ホームのひ孫トニー・ニューバマンとの情報交換を行った。さらに、きゅー植物園、サンダーソン壁紙制作会社、ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館のアーカイブにて、保存されている革紙の調査を行った。 自由学園工芸研究所に関する研究を前年度から引き続いてすすめ、その成果を2007年5月の服飾文化学会の基調講演にて一部公開した。
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