研究概要 |
本研究の目的は、『観無量寿経』所説の十六観を絵画化した十六観図に注目することによって、中国浄土教における信仰の実態と造形作品との関わりを明らかにすることにある。本年度は、ニューデリー国立博物館所蔵と敦煌莫高窟における現地調査と、十六観図データベースの構築を中心に、十六観図の分類に関わる考察研究を行った。 (1)現地調査: 未公刊の中唐以降の作例を対象に、現地調査を行った。2007年2月には、ニューデリー国立博物館所蔵スタイン・コレクションの絹本画(Ch.0051,Ch.V.001,Ch.Lvi.0018,Ch.Lv.0047)を、同年3月には、敦煌莫高窟の壁画(第147窟南壁,第177窟南壁,第200窟南壁,第201窟北壁,第201窟南壁)を調査し、それぞれ調書と描き起こし図を作成した。 (2)データの整理と分析: これまでに収集した図像およびテキストのデータを収集・整理するにあたって、国立情報学研究所ディジタル・シルクロード・プロジェクトが開発しているメタデータ管理システム(ASPICO)を用いて十六観図データベースを構築し、15作例のデータ入力を行った。さらに、今後のデータ整理を効率的に進めること、かっ手作業での主観的分類を検証することを目的として、入力した15作例を対象に、データベースを用いた数量的分析による作例の分類についても試みた。 (3)成果発表: 十六観図データベースの構築と分析に関する成果は、2006年12月15日に同志社大学にて行われた「人文科学とコンピュータシンポジウム」において「メタデータ管理システム(ASPICO)を用いた十六観図DBの構築とその分析」と題して発表した。また、平成18年度科学研究費補助金「研究成果公開促進費(学術図書)」による出版物『西方浄土変の研究』(中央公論美術出版、2007年2月)を刊行し、これまでに得られた十六観図に関する知見や、初唐期から盛唐期を中心とする敦煌画十六観図の基礎資料を発表した。
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