研究概要 |
本研究の目的は、『観無量寿経』所説の十六観に着目し、現存作例が集中する敦煌の作例について実地調査を行い、文献研究と摺り合わせることにより、信仰の実態と造形美術との関係を動的・実証的に明らかにすることにある。本年度は、敦煌莫高窟の壁画を引き続き調査し、既調査の諸作例を含めた分析・分類を行い、時代的変遷を洗い出すとともに、敦煌の十六観図に関わる文献資料として、フランス国立図書館が所蔵する敦煌文書を調査し、これまでの調査研究と考察の結果をまとめた。 (1)現地調査: 未公刊の中唐以降の作例を対象に現地調査を行った。2007年10月には、敦煌莫高窟において第91窟(南壁)、第92窟(南壁)、第116窟(南壁)、第117窟(南壁)、第126窟(北壁・南壁)、第188窟(北壁・南壁)、第18窟(南壁)、第19窟(南壁)の十六観図を計10点調査し、うち破損により図様が確認できなかった第92窟の1例を除く計9点について、調書と描き起こし図を作成した。また2007年12月には、フランス国立図書館において、計4点の敦煌文書(pelliot chinois2868,3304,3352,4515.16.2)を調査し、調書を作成した。 (2)成果発表: 2007年7月29日に名古屋大学において開催された、科学研究費補助金(基盤研究B,研究課題「交流と伝統の視点から見た仏教美術の研究-インドから日本まで-」研究代表者:宮治昭氏)の研究会において、「西方浄土変の研究-唐代における『観無量寿経』十六観とその造形化をめぐって-」と題して、これまでの研究の成果をまとめ発表した。また、敦煌における十六観図の分類と変遷について、論文「敦煌十六観図の分類と変遷」(『朝日敦煌研究員派遣制度記念誌』所収)を執筆した。
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