日本の羅漢図は中国画の影響のもとに制作されたと理解されている。実際、南宋の金大受筆羅漢図(東京国立博物館/群馬県立近代美術館)と共通する図像が鎌倉時代以降の羅漢図には多く見いだせる。しかし、舶載画は中世においても稀少なものであり、制作の際に直接参照されたとは考えにくい。おそらく、舶載画の写しや粉本等により制作されたと推測される。しかし、このような日本の羅漢図の多様な図様が舶載仏画やその受容を探る手がかりを潜在させていることは明らかである。本研究は羅漢図の図像、表現等のデータを抽出、収集し、データベース化することを主な目的としている。 本年度は次のような調査、研究を主に行った。 1.神奈川県立歴史博物館本十六羅漢図(全16幅のうち12幅)について、詳細なデータを採取、あわせて撮影を行った。また、平成15年度〜18年度に行われた修復によって得られた技法や伝来に関する新知見についてもデータを収集、記録した。その成果については所属機関の研究会で報告した。 2.舶載羅漢図および日本で制作された中世期の羅漢図の諸作例について、美術全集、報告書、図録等の刊行物や所蔵先の写真資料などからデータを収集した。 3.神奈川県立歴史博物館本十六羅漢図の旧軸木銘の発見により、江戸時代の伝来が明らかになった山口・満願寺に関する史料を山口県立文書館にて調査、撮影を行った。 4.図像の規範になったとみられる宋、元代の舶載羅漢図を中心として、群馬、東京、京都等において作品調査を行った。 5.日本で制作された羅漢図については、今後の研究の基礎となるよう、図版等により網羅的なデータベースを構築した。
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