研究概要 |
室町時代の中国文物に対する認識の基盤を解明しようとする本調査研究では,当時の中国文物受容の枠組みを規定した足利将軍家の評価・意義付けを主要な課題として下記の3つの観点から考察した。 (1)前年度に引き続き,文献資料とくに後花園天皇(1419-1470)の室町殿行幸を記録した『室町殿行幸御餝記』(永享9年:1437)の記載に注目して,伝来する同書の写本を校訂した。その内容をもとに会所附書院に飾られた文房具などの唐物飾りの組み合わせを分析して,その陳列方法および陳列装置との関わりを考察した。 (2)現存する東アジアの美術・工芸のうち日本で唐物飾りとされた作品,およびこれらと同時代の作品を調査して,その基礎的なデータを収集した。特に九州国立搏物館の特別展「京都五山 禅の文化展」および韓国国立中央博物館の展観において出陳作品を詳細に観察し,室町時代を中心とする東アジアの美術・工芸に関する具体的な知見を得ることができた。 (3)足利将軍家による中国文物受容の枠組みを相対化する試みとして,唐物のなかでも中心的な位置付けを与えられた仏教絵画に注目し,鎌倉・南北朝・室町時代の現存作品や文献資料を考察した。とくに日本最古の白衣観音図とされる九州国立博物館所蔵の一本について紹介を行い,その意義を考察した。
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