本年度の研究実施計画に掲げた項目に即して、それぞれの内容と成果・意義等を示す。 1 武家家伝・故実・家訓の伝本調査 本年度は武家故実に関する調査に重点を置き、彦根城博物館・鹿児島大学附属図書館・斎宮歴史博物館・萩市立萩図書館・無窮会図書館等の所蔵資料を調査し、デジタルカメラで撮影するかもしくは紙焼き写真を依頼する形で、重要とみなされる文献を入手した。また紙焼き写真の形で尊経閣文庫その他の所蔵する資料を収集した。現在それらの整理・検討を進めているが、一部については論文化した。従来未紹介の資料もいくつか見出すことができたので、資料的意義を示すための紹介を行う準備を進めている。 2 関連文学作品の伝本調査 軍記物語に関する伝本調査を、1の調査と並行して行った。重要な伝本については紙焼き写真の形での収集に努めた。本年度の研究では、資料調査の成果との関連で、とくに『源平盛衰記』に関わる記事に焦点をあわせる必要があった。そのため、早稲田大学図書館所蔵伝本等を入手し、本研究の遂行に際して活用した。 3 関連資料・記録の収集 当該研究の現状を把握し発展させるための基幹となる図書の収集を意図して、室町期の古記録および軍記関係の本文を軸に、図書資料を購入した。また、地方自治体史にみえる関連記事の調査も並行して行った。それぞれの記載内容を整理し、検討を進めている。また、その成果を論文の形で公表すべく調整中である。 4 研究成果の公表 昨年度以来の本研究の成果を盛り込む形で、本年度は二点の研究論文を公刊した。それらの中では、とくに武家故実の世界と深く関わる刀剣伝書を分析対象として、『太平記』・『曾我物語』との関連性を探った。また、論文ではないが、神奈川大学日本常民文化研究所所蔵の武家故実関係資料の紹介を同研究所「要覧」誌上にて行ったほか、現在校正中の論文(2008年度刊行予定)が二点ある。
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