本年度の研究実施計画に掲げた3項目に即して、それぞれの内容と成果・重要性等を示す。 1 武家家伝・故実・家訓の伝本調査本年度は家伝・家訓の調査に重点を置いて、鹿児島大学付属図書館・鹿児島県歴史資料センター黎明館・名古屋市蓬左文庫等を訪問し、過去二年間で調査しきれなかった文献を対象とした。各機関では、筆写・コピー・写真撮影等の形で資料を収集した。その過程で得た成果の整理と検討は継続中であり、近い将来その成果を論文の形で公表する準備を進めている。なお、その成果の一部は、すでにいくつかの論文に盛り込む形で公表することができた。ただし、現地での調査の段階で新たにその存在や意義が見いだされた資料群もあったため、それらの本格的な検討については、今後の課題として残されることとなった。 2 関連資料の収集・調査本年度は、室町後期から近世初期に生み出された軍記・軍書・合戦記・系図・兵法書・武具伝書等に関わる文献・書籍のなかに見いだせる関連記事を収集した。とくに、前年度から続く分析課題に利用するために、『源平盛衰記』の伝本を紙焼写真の形で入手したほか、いわゆる戦国軍記諸作品や兵法書に注目し、1の調査とも関連づけながら作業を進めた。 3 本研究のまとめ・研究成果の発表家伝・故実・家訓に表れた知識や価値観が<武家の知>を構成していく様相を把握するという本研究の目的に照らしつつ、3年間で調査し得た資料・伝本群の情報を整理し直した。また、新発見の資料群については、あらためて新課題として調査・研究を継続するための調整を進めた。さらに、3年間の成果を含んだ論文を本年度中には3点公表することができた。今後、資料紹介・翻刻を含めて、成果を継続的に公表していくために準備中である。
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